yenoniwa’s blog

心に残った表現を書き留めています

2021-01-01から1年間の記事一覧

第四頁 射す光、照らす光

体調を崩して、大学を半年休学することにした。切望していた穏やかな日々だ。 冷静になってみれば、これまでの何もかもが地続きだった。病院などで「原因と思われることはありますか?」と問われても、正直なところ問題が絡まり合いすぎてよく分からない。そ…

第三頁 つまりはこの重さ

私はどう生きるのか?何を成したいのか? こういった考え事に取り憑かれた時、私はどうすればいいのだろうか。奴らは、始め別の考え事の形をとって頭に忍びこみ、狡猾に蟻地獄を作って待ち構えている。今期のレポートのこと、卒論のこと、院進のこと、就職の…

第二頁 時の感触

静かな、何事もない、富み栄えた日曜日であった。それというのに、清顕は依然、水を充たした革袋のようなこの世界の底に小さな穴があいていて、そこから一滴一滴「時」のしたたり落ちてゆく音を聴くように思った。 *1 この文章を読んだ時、したたり落ちた「…

第一頁 紫色の火花

彼は人生を見渡しても、何も特に欲しいものはなかった。が、この紫色の火花だけは、──凄まじい空中の火花だけは命と取り換えてもつかまえたかった。*1 私が芥川龍之介の作品を読むようになったのは、高校生の頃、祖父の本棚にあった作品集で『侏儒の言葉』を…